2012年11月23日金曜日

カエルノワノ話vol.1『チェルノブイリと福島の比較から学ぶ放射能のお話』

皆さま、こんばんは。

市民測定室べこらぼ仙台代表、津田さんをお招きしてのお話会、
たくさんの方にご参加いただき、ありがとうございました。
津田さんには、どっさり資料をご用意いただき、
地図やらグラフやらとにらめっこしながらお話をうかがいました。
子どもたちは、会場を駆け回ったり、転がったり。
ふふふ。楽しそうでしたね。

せっかくですので、当日のお話をブログでもご紹介したいと思います。
少々長くなりますが、どうぞお付き合いくださいませ。


1.チェルノブイリと福島の比較

東電発表によれば、今回の福島原発の爆発によって空気中に放出された放射性物質は、
チェルノブイリの1/10と言われています。
チェルノブイリでは、2000km以上離れた北欧でも、セシウム137が検出されています。
福島の場合、爆発当時吹いていた西風に乗って、
放射性物質の多くが海に流されたことが、不幸中の幸いでした。
ただ、海に垂れ流された汚染水に、どのぐらい放射性物質が含まれているかは、
よく分かっていません。
チェルノブイリでは、今もストロンチウムによる土壌汚染が深刻で、
事故から3年後の汚染マップを見ると、111kBq/㎡の高濃度の汚染が、
発電所から30km以上離れた地点でも見られます。
また、プルトニウムも、30km以上離れたところでも、3.7kBq/㎡検出されています。
福島の場合、ストロンチウムは、最大で26kBq/㎡。
浪江町で検出されています。
プルトニウムは、概ね1~3Bq/㎡。
双葉町、浪江町、飯館村で検出されています。
ただ、プルトニウムは、微量ですが、福島県以外でも検出されています。
プルトニウムにも238、239+240と、ありまして、
その比率によって、福島原発事故由来か否かが分かるらしいのですが、
福島県以外で検出されるプルトニウムは、
60年代に行われた大気圏内核実験によって、ばらまかれたものだと考えられています。
・・・プルトニウムって、長距離を移動しないイメージだったんですが、
ほこりに付着すれば気流に乗って海も越えられるそうです。おそるべし。
というわけで、大雑把なまとめで申し訳ないのですが、
チェルノブイリと福島では、全く汚染のケタが違うことが、
よく分かりました。
でも、同じレベル7。
チェルノブイリ=7強、福島=7弱ってこと?

それぞれの汚染マップの詳細については、以下のサイトをご覧ください。

・チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故の放出された放射性物質の比較

・放射線量マップ

・プルトニウムとストロンチウムの土壌調査


2.福島原発事故前の汚染状況

今回のお話で、個人的に一番驚いたのが、事故前の日本の汚染状況。
津田さんがお持ちくださった資料は、1980年代後半の、
日本の食品に含まれている放射性物質濃度の一覧だったのですが、
チェルノブイリ事故後の1986年、お茶からセシウム137が55Bq/kg検出されていました・・・。
ドライミルクからも、ずーっとセシウム137が1~3Bq/kg検出されております。
ストロンチウム90も1Bq/kg未満ですが、確かに検出されておりました。
核実験が盛んに行われていた1960年代は、もっとひどかったのだとか。
魚や海のものからも、微量ですが、セシウム137とプルトニウム239+240が検出されています。

とすると、当然福島原発事故の影響を受けていない地域でも、
土壌調査すれば、セシウムが検出されます。
大分県竹田市では、平成24年の調査で、セシウム137が54Bq/kg検出されています。
この場合も、セシウム134と137の比率で、
原発事故由来か、過去の核実験由来かを判断します。

いや~、私、ミルクで育ったんですが、ばっちりセシウム入ってたんでしょうねえ。
思っていたより、清い身ではなかったようです。

・事故前の日常食に含まれる放射性物質
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-01-04-04

・大分県の土壌調査
http://www.pref.oita.jp/site/jishininfo/suijyun-chosa.html
 
・北海道の土壌調査
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/gjf/dojomonitoring.htm


3.福島県で行われている陰膳調査

陰膳調査とは、実際に食べている食事に、
どのくらい放射性物質が含まれているかを測定する検査方法のことです。
福島県では、78人の1日分の食事が、検出下限値0.3Bq/kgで検査されました。
2012年4月の検査では、9名の方の食事からセシウム134と137が合計2~13Bq/kg程度、
検出されたそうです。
その後の検査では、ほとんど検出されなくなりました。

・福島県調査の日常食に含まれる放射性物質検査
http://www.pref.fukushima.jp/j/nitijyousyoku0924.pdf

・コープふくしまでの日常食に含まれる放射性物質検査
http://www.fukushima.coop/kagezen/2011.html


4.海の汚染

2012年2月に、宮城、福島県沖の海底土のモニタリング調査(セシウム134、137)が行われました。
その結果、最も高い数値を記録したのは、仙台湾でした(680Bq/kg)。
調査地点が、泥場で底流も弱く、放射性物質がたまりやすい場所だったようです。
土の調査は、検体が砂か粘土かで数値が大きく変わります。
粘土質はセシウムを吸着するので、数値が高くなります。
海の汚染は、海流に乗り、台風やしけで海底をかき回されると、移動するので、
なかなかその実態がつかめません。
希釈されて薄まるところもあれば、逆にたまりやすく、海底のホットスポット化する場所もあります。
原発事故直後は、コウナゴやシラスなどの小魚から高いセシウムが検出されましたが、
徐々に汚染はスズキ、マダラなどの大型魚に移りつつあります。
現在、宮城ではマダラが出荷制限を受けています。
「食品検査ベース」を参考にしつつ、動向に注意する必要があります。



・仙台湾の海底土の放射性物質検査
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20120619_01.htm

・魚介類の放射性物質検査(放射性物質影響解明調査)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/housyaseibussitutyousakekka/pdf/h23report_final_1.pdf
 
・魚介類の放射性物質検査(ストロンチウム検査) http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/housyaseibussitutyousakekka/index.html
 
・食品検査データベース
http://oku.edu.mie-u.ac.jp/food/



・・・という感じで、盛りだくさんな内容!
質問も「水はどうなんでしょう?」「サンマはどうなんでしょう?」「レンコンは?」
「国産材で家建てても大丈夫ですか?」
「福島が仙台レベルになるにはどのくらいかかるんでしょう?」などなど、
多岐にわたりました。

放射能は、測ってみないと何とも言えない・・・というのが結論のようです。
食材も、西日本のものを取り寄せたとしても、
まだ核実験の影響が残っている可能性もありますし、
外国産のものであれば、チェルノブイリの影響も考えられます。
癌のリスクを下げたいのであれば、
放射能だけでなく、農薬や添加物やポストハーベストにも気をつけなければ・・・。

福島原発事故以前から、すでに私達は汚染の中を生きていたのですね。
だからと言って、もちろん、子ども達を同じ目に遭わせていいというわけではありません。
避けられるものは避けつつも、
海や大地や放射能と真剣に向き合っている生産者の方が作る、
バックボーンが分かる食材を選ぶことが、
生きる力を育んでいくのではないでしょうか。
今回の原発事故は、そんな顔の見える関係を結びなおす機会を与えてくれたのだと思います。

そして、それがかけがえのないものであることを、
子ども達に伝えていくことが、とても大切なのだと思います。
二度とこのような事故を起こさないために・・・。

津田さん、貴重なお話を本当にありがとうございました!

津田さんのブログです→http://d.hatena.ne.jp/kaztsuda/

それでは皆さま、またお会いしましょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿